小さな村ティンクル
 これは、まだ電気も電話もなかった頃のお話です。

 町から少し離れた所にティンクルという小さな村がありました。そこは、入江(いりえ)に面した村で、とってもきれいで静かな所でした。村は、ちょうど10段で出来た段々畑(だんだんばたけ)のようになってて、どの段も20軒づつの家がありました。また、その段々を下りきった所には、いつも煙突から、ほんのり色のついた湯気がでている工場がありました。その工場では、薬を作っていました。

 村の人のほとんどは、そこで薬を作る薬師(くすりし)という仕事をして暮らしてました。昔から伝わる薬で、とてもよく効くと評判で、遠くの大きな町からも買い求めに来る人が沢山(たくさん)いました。

 その村には、リリとゴゴと言う9才になる姉と6才になったばかりの弟の2人の姉弟が住んでいました。姉のリリはおとなしく慎重(しんちょう)な性格でした。反対に弟のゴゴは活発(かっばつ)で、すばしっこい性格でした。

 二人の家は段々になった村の上から2段目の一番西側にありました。リリとゴゴの家でも薬師(くすりし)をやっていて、お父さんとお母さんは、忙しい時期になると、毎晩遅くまで工場で働いていました。

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【 2008/05/01 00:03 】

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リリの宝物
 リリは、月曜日から土曜日の間、3時頃まで学校に通っていました。学校といっても小さな村なので、一クラスしかなくて、7才から16才の子供20人が一緒に勉強していました。

 この村の子供たちは、大きくなると、そのほとんどが薬師になります。ですから授業の内容は、材料の植物のことや、どこで手に入るかや、どうやって混ぜて薬にするかなど薬に関することばかりで、実を言うと、リリは少しばかり飽き飽きしていました。『難しい植物の名前を次から次へと覚えることに何の意味があるのかなぁ〜。そんなの覚えなくても、教科書を見ればいつでもわかるのに。』といつも思っていました。

 そういう訳で、今日もリリは、授業に退屈してしまい、海が見える窓際の席で、物思いにふけっていました。そして、去年のバザーで、お父さんに買ってもらったキラキラ光る細かいつぶの入った丸い消しゴムを手のひらでコロコロさせて遊んでいました。その消しゴムは、最初は、四角くかったのですが、授業中に少しずつこっそり削って、まん丸にしたのです。どこもデコボコが無くて、手のひらで転がすと、太陽の光が色々な方向に反射して、キラキラ光ります。

 リリは、その消しゴムを「キラ消し」とよんで、一番の宝物にしていました。そして、リリは『去年のバザーは、楽しかったなぁ〜。早く今年も来ないかな。』と、そのキラ消しをころがしながら、思いました。

「ふぁ〜」

キラ消しを転がしているうちに、リリは、思わずあくびをしてしまい、慌てて口を押さえました。でも厳しいゼクセル先生は見逃しませんでした。

「リリさん!」

黒板の方を向いていたゼクセル先生が、急に振り向き、厳しい声で言いました。

「今、私が言った薬草の名前を言ってください!!」

リリは、顔を真っ赤にして、立ち上がりました。キラ消しを転がしながらも、なんとなく先生の話は聞いてましたので、本当は答えられそうです。隣の席から、友達のカミュランが、こっそり教科書のページを指して、「ココだよ。」って、小声で教えてくれてます。でもリリは、ちゃんと聞いてなかったバツの悪さと、急にクラスのみんなに注目されてしまった気恥ずかしさで、声が出ず、ますます顔が真っ赤になって黙ってしまいました。

「リリさん。全く集中していませんね。バツとして、明日までに薬草の名前を100書いてくるように!」

と、先生は厳しく言いました。

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【 2008/05/01 00:05 】

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ゴゴの一日
 毎朝、家族のみんなが仕事と学校に出ていってしまうと、ガランとした部屋にゴゴは一人残されます。

「今日は何して遊ぼうかなぁ〜」

と、ゴゴは一人言を言いました。しばらくは、一人で絵を描いたり、ビー玉で遊んでたりしてましたがお昼頃になるとすっかり飽きてしまいました。そして、お母さんの準備してくれたお弁当を食べながら、小さな声でつぶやきました。

「そうだ、おばあちゃんちに行こう。」

 村には、同じくらいの子供がいませんでしたので、ゴゴは、お昼の間、近所のおじいさんやおばあさんと遊ぶか、一人で遊ぶかどちらかしかありませんでした。それで最近では、もっぱら一つ上の階に住んでいるおばあちゃんちに行ってました。

「おっばあちゃ〜ん」

ゴゴは元気良くドアを開けておばあちゃんちに入りました。おばあちゃんちはいつも何かの食べ物の良いにおいがします。

「おぉ〜ゴゴちゃんか。今日は何をして遊ぼうか。それとも、おいしい物を作ったけど、食べるかい?」

おばあちゃんは、台所の方から、ゆっくり出てきて、ニコニコしながら、少ししわがれた声で答えました。

「食べる。食べる。」

ゴゴは、さっきお母さんのお弁当を食べたばかりなのに、おばあちゃんの作ってくれるおやつだと、いつだって、いくらでも食べられます。

「今日はな〜に?」

ゴゴが聞くと、おばあちゃんは

「今日は、おばあちゃんの特性シロップがかかったホットケーキだよ。さあ、お食べ。」

と、言って、大きなお皿にホクホクの三段重ねのホットケーキを持ってきてくれました。ホットケーキの上には、トロリととろけたバターが乗っています。さらにその上にお皿のふちからこぼれそうなくらいにたっぷりとシロップが、かかっていて、とっても良いにおいがします。

「わぁー、いっただきまーす。」

ゴゴは、思わず声を上げて、すぐに食べ始めました。

「そう言えば、リリちゃんは最近来ないね。前は良く来てたのにねー。どうしてるの?」

ホットケーキをパクついているゴゴをニコニコ見ながらおばあちゃんは、たずねました。

「学校だよ。宿題もあるから、来れないみたい。お勉強いそがしいみたい。」

ゴゴが答えると、

「そうかい。今度、遊びにきてねと、言っておいておくれ。それから、おやつをたっぷり用意しておくからって。」

と、おばあちゃんは言いました。ゴゴは口いっぱいに、ほおばっていたので、首をたてに振って返事をしました。

 ゴゴは食べ終わると、

「ごちそうさまー。」

と言って、ポケットからパチンコとビー玉を出して、おばあちゃんに聞きました。

「これやっていい?」

おばあちゃんは、

「あら、ビー玉でやるとそこら中のお皿や花瓶が割れでしまうねー。あぶないよ。かわりに紙を丸めてあげるから、それでやりなさいね。それから、それは絶対、人に向けたりしないって、やくそくできるかな?」

と答えました。

ゴゴは、

「やくそくするー。」

と、言ってさっそく遊び始めました。おばあちゃんの作ってくれた丸いまとに向かって、ぎゅっとパチンコのゴムをひっばります。そして、よーく狙いをつけて、ばっと離しました。すると、紙の玉は、まとに飛んでいきます。でも、いつも少し違うところにいってしまいます。おばあちゃんは、

「手をまっすぐ伸ばしてー。それとすこーしだけ、下を狙うといいよ。」

と言いました。そのとおりに何度となく、やっているうち、ゴゴは、すっかりまとに当たるようになりました。

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【 2008/05/01 00:11 】

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3時になったら
 おばあちゃんちにはボンボン時計がありました。ちょうどの時間になると、その時間の数だけ「ボーン」と、鳴ります。 ゴゴが、夢中になってパチンコをしていると、

「ボーン、ボーン、ボーン」

と、時計が3回鳴りました。すると、ゴゴは急にソワソワし始めました。そして

「おばあちゃん、僕そろそろ帰るから。」

と、言いました。おばあちゃんは

「おっ、もうこんな時間かい。お姉ちゃんを迎えに行っておいで。」

と、言いました。ゴゴはその言葉を聞くと挨拶もそこそこにドアを開けて、ダッーと駆け出しました。 ゴゴは、3時頃、姉のリリが学校から帰って来るのを毎日とても楽しみにしていますた。今日も家の隣にある坂まで駆け足で来ると、リリの姿が坂の下の方に見えるのを、今か今かと待ちわびていました。

「お姉ちゃんだっ!おーい!おーい!」

ゴゴは、西側の坂を登って来るリリを見つけて、小さくぴょこ−んぴょこんとジャンプしながら声をあげました。でもリリは、本でも読んでいるのでしょうか、全然気付かないようすで、下を向いたまま、ゆっくりゆっくり登って来ます。
 ゴゴは何度呼んでもリリが気付かないので、とうとう坂を駆け下り始めました。

 リリは今日、学校であったことを思い出しながら歩いていました。『あ〜あ、今日は最悪だったなぁ。先生にしかられて、宿題たくさんでちゃったし・・・』リリは、宝物のキラ消しをまた、手のひらでコロコロさせながら、思いました。

「おっねーちゃーん!」

ゴゴが、走りながら大声で、近づいて来ました。でも、リリは気づきません。ゴゴは、あと、5歩くらいの所でつまづいてしまい声をあげました。

「わーー!!」

リリは、その声にやっと気がついて、ふと顔をあげるとゴゴは目の前にせまっていました。

ドシーーン!!

とうとう、リリとゴゴはぶつかってしまいました。その時です。コロコロコロッと、リリの手からキラ消しが落ちてしまいました。そして、坂のはしにある溝に向かって転がり始めました。リリは

「あっあっ」

と、言いながらキラ消しを追いかけましたが、あと少しのところで、溝に落ちてしまいました。

 ゴゴは「ああ、痛かった。」と、言いながら溝をのぞき込んでいるリリに近づいて来ました。

「どうしたの?お姉ちゃん。」

と、聞くと、リリは「溝の穴からキラ消しが落っこちちゃったみたいなの。」と、答えました。溝は、30センチづつのふたがされていて、その境目(さかいめ)の所に穴が開いています。どうやら、その穴にキラ消しは落ちてしまったようです。

 二人で頭を突き合わせて、穴をのぞき込みましたが、意外と穴は深いようで真っ暗で何も見えません。「あ〜あ」リリはがっかりして、思わず声をあげました。その時です。ゴゴが

「お姉ちゃん!なんか赤い光が見えるよ!」

と、言いました。リリも、急いで、のぞき込みました。確かに赤い光が見えます。しかも、ゴトゴトとなにかが動いているような音がします。でもしばらくすると、赤い光も音もしなくなりました。

「今の何だったのかなぁ」
ゴゴが言いました。リリは

「そんなことより、キラ消しが、なくなっちゃったじゃない。」

と、少し涙声(なみだごえ)で言いました。

「ごめんなさ〜い」

と、ゴゴは、しょんぼりして言いいました。

 それから、二人は手をつないで家に帰りました。

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【 2008/05/01 00:49 】

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家の守り神
「ただいま〜」

誰もいない家に二人は帰って来ました。

 家には、玄関を入ってすぐ左側に大きな丸い石が置いてある「よりどころ」と呼ばれる場所がありました。

 リリやゴゴの部屋より広くて、たてが5メートル、よこが3メートルほどもありました。実は、リリたちの村ではどの家もほぼ同じ間取りで、玄関の左側か右側に、同じような場所があり、同じように大きな丸い石を置いていました。その石のまわりには、お花や供え物が置いてあって、丸い石は家の守り神だと、リリたちは教えられていました。

 リリがまだ学校に行く前の小さかったころ、お隣には、変わったおじいさんが住んでました。そのおじいさんが生きている頃、おじいさんのお家の「よりどころ」て遊んでいて、守り神の石の真横にあった穴に落ちてしまい、大変しかられた覚えがあります。それからは、なんだか少しこわい感じがして、あまりそっちの方は見ないようにしていました。

 でもゴゴは、違いました。家に帰ってきた時、必ず1回はその場所に行って石より高く飛べるか試してみます。今日もゴゴは、「よりどころ」に行きましたが、リリはサッサと部屋に入って行きました。

 リリは、カバンを台所のテーブルに置くと、イスに腰かけて、フーッとため息をつきました。そして、

「あーあ、今日はついてなかったなぁ〜。先生には怒られたし、キラ消しは、なくしてしまうし・・・」

と、ひとりごとをつぶやきました。

その時、

「おねーちゃーん。おねーちゃーん」

ゴゴが呼ぶ声が聞こえました。

「たいへんだよー。」

リリは急いでゴゴのいる「よりどころ」のほうへ行きました。

「どう、したの?」

リリが、聞きました。

「キラ消しが、あったよ。」

ゴゴが指差して言いました。

「エッ、エッー!!」

リリは、びっくりして思わず声を上げました。キラ消しは、リリが作ったものなので、この世の中に一つしか無いはずです。しかも、先ほど坂の途中で、溝の中に落としてしまったので、こんな所にあるはずがありません。

 でも、キラ消しは、確かに丸い大きな石の横にちょこんと、ありました。

 実はその時、少し変わったことが、起こっていました。丸い大きな石のわきにある小さな穴のところで、かすかにゴトゴトという音がして、赤い小さな2つの明かりが光っていたのです。でも、リリもゴゴも、そのことに気づきませんでした。 ただ、リリは、きっと家の守り神さまが、かわいそうに思って、取ってきてくれたんだと思ってうれしくなりました。そして、ゴゴといっしょに

「ありがとうございます。」

と、丸い石に向かって、ペコリとあたまをさげました。

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【 2008/05/01 00:52 】

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バザーの日
 毎年、10月になると、ティンクル村では、バザーが開かれます。昔は、村で作った薬を細々と売っているだけでしたが、最近では、他の町からたくさんのお店がやってきて、とってもにぎやかです。
 このバザーには、めずらしいお店が、たくさんでるので、村の子供たちは、みんな楽しみにしていました。リリとゴゴもそうでした。

 その日の朝になると、リリとゴゴのお母さんは、わざと、おつかいを二人にたのみます。

「リリ、ゴゴ。お使いをたのまれてくれるかい?」

お母さんが聞くと、

「はーい!」

と、二人は声をそろえて、元気良くこたえました。そして、

「なにを買ってくるの?」

すぐにゴゴが聞きました。

「去年と同じもの?」

リリも続けて聞きます。お母さんは、

「おやまあ、ふだんは二人ともお使いと聞くとコソコソかくれていなくなるのに、今日はとってもお利口さんだね〜。」

と、とてもおかしそうに言いました。お父さんもニコニコしながら聞いています。

「それじゃ、チーズを一斤買ってきてもらおうかしら」

と、お母さんが言うと、二人は

「はーい」

と、また元気良く答えました。そして、チーズ代のお銀貨5枚をお母さんからもらいました。

 ゴゴはお金をもらうと、すぐに家を飛び出しそうになりました。でも、まだリリは、じっとしています。ゴゴが、

「おねーちゃん、はやくー。」

と、玄関のところで、けげんそうな顔つきでリリの方を見て、叫んでいます。お父さんは、リリのそのようすを見て

「そうそう、大事なものを忘れるところだった。やくそくしてたからね。」

と、言って、おこづかいに銀貨を1枚づつくれました。
 それから、二人は

「お父さんありがとう。では、行ってきまーす」

と、はりきって家を出ました。家を出ると、ゴゴは

「おねーちゃん、良く覚えてたねー。頭(あったま)いいー。」

と、たいそう感心したようすで、リリの方を見ました。そして、

「ぼく、おこづかいのこと、すっかり忘れてた。それに銀貨なんて初めてだよ。」

と、言いました。そして、ゴゴはもらった銀貨を大事そうに両方の手のひらに、はさんで歩いていました。リリは、

「落っことさないように、ポケットの奥のほうに入れとこうよ。」

と、ゴゴに言って、自分もスカートのポケットにしまい込みました。ゴゴは、

「そうする。その通りにする。やっぱり、おねーちゃん、頭いいねー。」

と、言ってズボンのポケットに押し込みました。

 二人が、村の大通りまで来ると、たいそう、にぎやかになっていました。大通りと言っても、いつもは、雑貨屋さんや魚屋さんなどの小さなお店が、ほんの数軒のきをつらねるだけですが、今日は出店がたくさん出ていて、全く違ってました。

 南でとれためずらしい果物や、北のほうのミルクで作ったお菓子を始めとする、珍しくておいそうな食べ物。色あざやかな服やアクセサリー。そして、大道芸。中でも、何も無いはずの帽子からボールやハトを出したり、トランプの数字を見ずに当てるマジックに、リリとゴゴちは、目を丸くして見入っていました。

「リリッ、リリ」

突然うしろから、声をかけられて、リリは、ちょっとびっくりしました。振り返ってみると、同じクラスのカミュランでした。

「いっしょにまわらないかい?」

カミュランが言いました。リリが答えるより先にゴゴは、

「いっしょにまわろうよ。ね、お姉ちゃん、いいでしょ。」

といいました。ゴゴがもっているパチンコは、実はカミュランが、作ってくれたものです。だから、ゴゴはカミュランが大好きでした。リリも本当は、声をかけられて、うれしかったのですが、

「いいよ」

とそっけなく言ってしまいました。

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【 2008/05/02 23:28 】

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紙芝居屋さん
 それから、しばらく三人は、いろんなお店や大道芸を次から次へとながめていましたが、やがて、ふと誰も集まっていないお店が、一番目立たないすみっこにあることに気づきました。誰もいないみたいです。

「何のお店だろう?」

とカミュランが言いました。お店の前には、たてが50センチ横1メートルくらいの木でできた四角いぶ厚い板が台の上に乗っていました。そして、そのぶ厚い板には、両開きの扉がついていました。
 ゴゴが、お店の奥に向かって

「おーい。おーい。」

と大きな声をかけました。すると、とつぜん、

「ひゃ〜。おっ、おっ、おっ、おやかた!かっ、かっ、かんべんしてくださひ。」

とつぜん20才くらいのやせた男が台の向こうから、飛び起きました。男は、今まで寝ていたらしく、寝ぼけているみたいです。そしてフラフラしながら続けて言いました。

「いっ、今から、始めるところです。その〜あの、準備でいそがしくて・・・・・・。ん?」

と、そこまで言いかけた時、やっと少し目が覚めたみたいで、リリたち三人の顔をまじまじと見て、

「ちくしょう。まったくビックリさせやがって。おやかたかと思っちゃったじゃないかよ。ただのこどもかー。」

と、男が言いました。それを聞いたカミュランが、ちょっとムッとしたようすで、

「こどもでも、お客さんには変わりないと思います。ここでは何を売っているのですか?」

と、少し大きな声でハッキリした口調で言いました。カミュランは、相手が誰であれ、自分の正しいと思ったことは、いつもハッキリと言います。そして、自分が間違っていると気づいた時も、キッパリとあやまることができます。そんな時、リリは、いつもヒヤヒヤしながらも『カミュランはリッパだなぁ。私もあんなふうに言えたらなぁ。』と思います。でも、今日みたいに見知らぬ大人が相手の時は、『相手が怒り出さないかなぁ。』とてもドキドキしてしまいました。
カミュランの強い口調に、男はちょっとビクッとすると、また急に態度を変えて、

「いらっしゃいませ。ここは、紙芝居屋でございます。あめを買ってくれたら大変オモシロい話しが聞けますよー。」

と、少し小さな声でおずおずと言いました。ゴゴは、

「紙芝居ってなあーに?」

と聞きました。

「紙芝居ですか。それは、さあー、これです。」

男は、急にはりきった声をだして、サッと板についている扉を両方に開きました。そこには、宝箱に金貨がたくさん入っている絵が描かれていました。そして

「宝はどこだよー。どこなんだよー。」

と、ちょっとへたな字で変わった題が書かれていました。リリは、『あまりオモシロそうじゃないなぁ。』と思いました。男は続けて言いました。

「さぁさ、このオモシロい紙芝居を見るには、アメを買ってね。今なら、たったの1銀貨。今なら、たったの1銀貨だよー。」

ゴゴは、ポケットに手を入れてサッと銀貨を出そうとしましたが、リリがその手をすぐに押さえました。そして、ひそひそ声で

「ゴゴ、ゴゴ、ダメだよ。高すぎるよ。第一、オモシロくなさそうだよ。」

と言いました。すると、カミュランが

「銀貨1枚だって!!これはビックリした。それだけあれば、リンゴあめに綿菓子やアイスクリームが買えて、その上、サーカスまで見られそうだなぁ。高すぎるからやめた。」

と言ってスタスタそこから離れて行こうとしました。そして、リリもあわてて、ついていこうとしました。
男は大変あわてたようすで言いました。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。5銅貨でどうだ。いや、3銅貨にするから。いやいや、1どうー」

男は言いかけましたが、カミュランは、振り向きもしないでスタスタ離れて行きます。リリもついて行こうとして、ふと気がつきました。ゴゴが、ついて来てません。

「ゴゴー、早くー。行くよー。」

リリはゴゴを呼びましたが、ゴゴはお店の前で、紙芝居を見入っています。そして、言いました。

「お姉ちゃん。僕は見ていくから。先にいってて。オモシロそうだもの。僕、ぜったいに見る。」

それを聞いた男は、

「さすが、坊ちゃん、お目が高い。」

と、言いました。カミュランは、ゴゴは一度言い出すと、なかなか言うことをきかないのを知ってましたので、

「しょうがないなぁ。じゃ僕らも見ていくかー。」

と言って、しぶしぶ、お店に戻って来ました。そのようすを見て男はニタニタしています。リリは小さな声で、カミュランに聞きました。

「だいじょうぶなの?」

カミュランも小さな声で

「だいじょうぶ。だいじょうぶだよ。まかせといて。」

と答えて、男に向かって言いました。

「さっき、1銅貨って言いましたよね。」

「え〜っと、そんなこと言いましたっけ?」

男はとぼけたようすで、言いました。

「言いましたよ。確かに。1銅貨だって」

と、カミュランが答えると、男は

「いいや、絶対に言っていませんよ。」

と言い、しばらく押し問答が続きました。リリはその間黙って聞きながら、キョロキョロまわりを見ていましたが、ふと何かに気づいたようすで口をはさみました。

「え〜と、この裏返しのカンバンに『アメは、たったの1銅貨だよー。』って書いてあるのだけど・・・」

 男は、『しまった』という表情を浮かべて、少しの間だまってしまいましたが、気を持ち直して言いました。

「オーッと、忘れてました。今日は、バザーの初日なので、特別値引きしてます。1銅貨、こんなにオモシロい紙芝居がたったの1銅貨ですよ。」

カミュランは、『やるー』といった顔でリリのほうを振り返り、

「1銅貨なら見てもいいよのね。」

と聞きました。リリがうんうんとうなづくと、

「では、アメを3本ください。」

と、男に言いました。
 3人がお金を払って、アメをもらうと

「宝はどこだよ。どこなんだよーの、はじまり、はじまりー。」

と、男は言って、サッと表紙をめくりました。そして、話し始めました。

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【 2008/05/03 23:31 】

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宝はどこだよ。どこなんだよー
 むかし、むかし、あるところに、小さな村がありました。村人たちはとても働き者で、毎日朝から晩まで小さな畑をたがやし、いそいそと働いていました。

 その村の一軒一軒の家には、神さまがいました。神さまは、家の横にある穴の中に住んでいて、その家族があぶなくなったり、こまったことが起こると、いつも助けてくれました。

 ある日のこと、1人の若者が、

「ああ、今日は働きたく無いなぁ〜。誰か、代わりに畑をたがやしてくれないかなぁ〜。」

と、ひとりごとを言いました。そして、その日は畑に行きませんでした。翌日、若者は、朝早く起きて言いました。

「昨日は、悪いことをしたなぁ〜。仕事をさぼってしまった。今日から心を入れ替えて、また、ちゃんと働こう。」

そして、畑のほうに歩いていきました。若者は畑につくと、とてもおどろきました。畑が、たがやされています。若者は、『誰かが、たがやしてくれたみたいだ。お礼を言わなくちゃ。』と思いました。

 それから、若者は村の一軒一軒を訪ねて歩きました。でもどの家の者に聞いても知らないという答えばかりでした。若者は大変不思議に思いました。
 その日の夜、若者はまた、

「ヤッパリ、明日も仕事したくないなぁ〜。誰か代わりに種をまいてくれないかなぁ〜。」

と、またひとりごとを言いました。翌朝、若者が畑に行ってみると、今度は種がまかれています。そして、また村中に聞いてまわりましたが、誰も知らないということでした。となりの畑をたがやしていた人もなにも見ていないようすでした。若者は何が何だかわけがわからなくなってしまいました。若者はさんざん悩んだあげく、『もしかしたら、願い事を言うと、夜のうちに誰かがやってくれているのかもしれない。みんなで僕をかついでいるに違いない。』と思いました。そうして若者は、少し大きな声で

「明日は畑に水をやらなきゃ。でも明日もやりたくないぞー。誰かやってくれないかなぁ〜。」

と言いました。

 その日の夜のことです。若者はコッソリ畑に行ってみました。しばらくすると、なにやら水をまく音がし始めました。若者がものかげから見てみると、そこには、水をまいている神さまがいました。

 若者はビックリして聞きました。

「どうして神さまがやってくれているのですか?」

神さまは

「頼まれれば、なんでもやるよ。さあ、水まきは終わったよ。次は何をやれば良いのかい?」

と、言いました。

 次の日、神さまが何でもやってくれるというウワサは、またたく間に村中に広がりました。
最初は、こわごわ頼んでいましたが、神さまたちは何でもやってくれるので、村人たちは、そのうち誰も働かなくなってしまいました。

 ある日のこと、

「金貨100枚、持ってきてくれ。」

と、村で一番欲張りな男が言いました。
神さまは、その男の家のとなりにある穴にもぐって行きました。そして、次の日、金貨を100枚、持って戻って来ました。
次の日から村中たいへんな騒ぎになりました。

「私は真珠の首飾りが欲しいわ。」

だの

「ダイヤモンドをちりばめた服が欲しい。」

だの村人たちは次から次へと新しいお願いを神さまたちにします。神さまたちは大忙しで自分たちの穴にもぐっては、新しい物を持ってきました。

 実は、神さまたちの上には、さらにエライ神さまがいました。そんなようすをみていたエライ神さまは、たいそう怒ってしまいました。そして、

「なんて、だらしない村人たちだ。自分たちで働こうとしないばかりか、宝物まで欲しがるとは!!」

と言って、村人たちから宝物を取り上げると、神さまたちの穴にもフタをしてしまいました。村人たちは、やっと自分たちの間違いに気づきましたが、エライ神さまは許してくれませんでした。

 それから、その村人がどんなにお願いしても、神さまたちが助けてくれることはありませんでした。神さまたちはフタをされたまま、穴の中で宝物を抱いて、ひっそりと暮らしています。今でもどこかにこの村はあるということです。

オシマイ

 男が話し終わると、ゴゴは、

「わー、おもしろかったー。」

と言って、パチパチパチパチと元気良く手をたたきました。リリとカミュランも意外と話しがおもしろかったのでパチパチと手をたたきました。

「一軒一軒、神さまがいるなんて、僕たちの村にちょっと似ているね。でも、神さまの出入りする穴なんて聞いたことが無いし、穴をふさいでいるフタも見たことが無いので、ヤッパリ僕らの村とは、違うみたいだ。それに皆、働き者だし・・・。でも、そんな穴があったら、すぐにでも探検するのになぁ。」

と、カミュランは言いました。ゴゴも

「探検してみたい。してみたーい!!」

と言って、ピョンピョンはねました。でもリリだけは、うかない顔をしてました。そして、昔のことを思い出していました。
『そう言えば、小さい頃に、隣のおじいさんのうちで、穴に落ちたことがあるわ。普通のおうちには、あんな穴なんか無いのに、どうしてあのおじいさんのおうちには、穴があいてたんだろう?それに・・・、あの時、おじいさんは、とってもこわい顔をしていた・・・・・・。そもそも、あのおじいさんは、誰だったんだろう。片目で眼帯をしていた。その目でにらまれて、とっても恐かったなぁ。お父さんもお母さんもよく知らないみたいだった。たしか、リリが赤ちゃんの頃に、どこからかやって来て、この村に住み着いたって言ってたっけ・・・。』

 リリが、もの思いにふけっていると、紙芝居屋の男は、ふーッと一息ついて、3人に言いました。

「でも、意外とこの村のことかも知れませんよ。昔ばなしには、本当のことが混じっていることがよくあるんですよ。それに、あっしは、聞いたことがあります。村から村へ、神さまの穴をさがしている年とった男がいるってことを。その年寄りは片目で、何年か前、この近辺の町でみかけたって話しですよ。」

それを聞いたリリは、ガーンと衝撃をうけました。そして、『隣のおじいさんだ!!』と思いました。
カミュランは、

「そんなことがあるもんか。この村の人たちは、みんな働き者だぞ。第一、神さまの穴なんて無いし。でも、お話しはおもしろかったよ。ありがとう。」

と言いました。そしてカミュランが

「さあ、みんな、そろそろ行こうか。」

と言ったので、リリとゴゴもさよならを言って紙芝居屋さんをあとにしました。

 カミュランは、紙芝居を見たあとすぐに、用事があるからと言って、二人と別れました。リリとゴゴも、夕方になってきたので、おつかいのチーズを買って、家に帰りました。
 

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【 2008/05/05 22:27 】

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大きな音
 その日の朝は、少し雪がちらついてました。リリとゴゴの村ティンクルに冬がやってきたのです。いつものようにリリは学校に、お父さんとお母さんは工場へ行きました。
 リリが授業を受けている時でした。急に、ドカーンという大きな音がしました。どうやら、学校の隣にある薬を作る工場からのようです。クラスの生徒たちは、ガヤガヤと騒ぎ始めました。ゼクセル先生も少しあわてて、

「皆さん、少し自習をしていてください。先生がようすを見てきますから。先生が戻って来るまで教室を離れないように。年長の者は、下の子の面倒をよく見ておくようにお願いします。」

と言って教室を出ていきました。
 リリは、『工場の方から、おっきな音がしたなぁ。お父さんとお母さんたち、だいじょうぶかなぁ。』とちょっと心配になりました。そして、隣にいるカミュランに

「さっきの音、何だったのかな?だいじょうぶかなぁ?」

と聞きました。カミュランは、

「とりあえず、先生の言う通り待っていようよ。」

と言いました。リリが黙っていると、カミュランは、しばらく間をおいて

「そう言えば、今朝のことだけど、村の大通りを通ってきた時、あやしい人たちを見かけたんだ。」

と言いました。

「えっ、あやしい人たちって、どんなかんじだったの?何人くらい、いたの?」

と、リリは聞き返しました。カミュランは、

「10人くらいだったかなぁ。みんな目つきが鋭くて、コシに剣を刺していたよ。ボクがちらっとそっちの方を見ると、ギョロってにらまれたので、とてもこわかった。それと、一番えらそうにしている人は、長いヒゲをしていたよ。・・・そう言えば、一人だけ前に見たことある人もいたっけ。えーと、どこで見たのかなあ?・・・そうだ!!バザーの時だ。いっしょに見た紙芝居屋さんだ。それに、」

と少し興奮ぎみに言うのを打ち消すように、リリは言いました。

「へー、紙芝居をまたやりに来たのかなぁ・・・。それはそうと、先生ずいぶん遅くない?みんな、さわぎ始めているし。」

年長の子たちが、ようすを見に行ってみようと言い始めています。そして、一番年が上のハリーが言いました。

「クラスを代表して、今からようすを見に行ってくるから。」

それを聞いたカミュランは、急に立ち上がって、

「でもゼクセル先生は、待っていなさいと言いましたよ。言いつけを守った方が良いと思います。」

と言いました。ハリーは

「なんだこわいんだろ。良いよ、お子さまはお留守番してろよ。」

と少し薄笑いを浮かべながら言いました。カミュランは、少し顔を紅潮させて、言いました。

「こわくなんか無いよ。ただ、先生の指示を守るべきだと思っただけさ。なんだったら、ぼくが行ってもいいよ。」

リリは、『わー、カミュランがまた、上級生に反抗している。だいじょうぶかなぁ。』と思いました。そして、

「カミュラン、カミュランったら。やめた方が良いよ。」

とカミュランのそでを引っ張りながら、小声で言いました。でもカミュランは立ったまま、ハリーの方をジッーとにらみつけています。ハリーは、やれやれといったようすで、

「それじゃ、カミュランも、いっしょに来いよ。」

と言いました。カミュランは

「良いよ。いっしょに行くよ。」

と答えて、いっしょに教室を出て行きました。

 しばらくしてもカミュランたちは帰ってきませんでした。リリはだんだん心配になってきました。後ろの席のファラがリリに話しかけてきました。ファラはリリと同い年の女の子で、よくいっしょに遊んでいます。

「ねぇ、ねぇ、リリー。カミュランたち帰ってこないねー。どうしちゃったのかしら。」

クラスのみんなもザワザワ騒ぎ始めました。そして、とうとう、みんなで行ってみようということになりました。
 リリも、ファラといっしょにみんなについていきました。学校を出て、裏口の方から工場へ抜ける道をゾロゾロと歩いていきました。

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【 2008/05/06 21:16 】

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村に来た盗賊
 工場の門の前まで来ると、たくさん大人が、集まっていました。そして、なにやら大声で工場に向かって話していました。近づいてみると、それは村長さんと村の年寄りたちでした。リリはファラといっしょに、ゼクセル先生やカミュランたちを探しましたが、見つかりませんでした。

「人質を解放しなさい!」

村長さんの声が聞こえました。おじいさんやおばあさんたちは、まわりで、ザワザワ話しています。その中には、リリとゴゴの上の階に住んでいるおばあちゃんもいました。

「リリちゃーん!」

リリを見つけたおばあちゃんは大声で呼びました。リリはすぐに気づいて、おばあちゃんの方へ駆け寄りました。ファラもつられて、ついていきました。

「なにがあったの?」

リリが聞こえました。おばあちゃんは

「それが私たちにも、よくわからないんだよ。どうやら、盗賊たちが、やって来て、工場に立てこもっているらしんだよ・・・。ふー」

とため息をつきながら、答えました。リリは

「じゃあ、お父さんやお母さんたちは、盗賊たちに、つかまっているの?そうだ!!ゼクセル先生や友達のカミュランが先に来たんだけど、おばあちゃん、知らない?」

と聞きました。おばあちゃんは

「くわしい事はよくわからないんだけど、どうも工場で働いている大人たちは、みんな人質になっているみたいなんだよ。それから、子どもも少しいるって聞いているよ。普通は工場に、子どもはいないから、リリのお友だちかも知れないねー・・・。とにかく、ここは大人にまかせて家に帰りなさい。何も心配ないからね。お友だちも、そうしなさい。」

と言いました。リリはファラと顔を見合わせました。リリは

「でも・・・」

と言いかけましたが、

「とにかく、すぐに帰りなさい!!」

いつものやさしくてノンビリした口調とは打って変わったおばあちゃんのキビシイ口調に、リリは少しビクッとして小さな声で

「はい・・」

と答えました。周りにいた他の子たちも同じように、大人たちにさとされて、しぶしぶ帰ることになりした。

 リリとファラは取りあえず荷物を取りに教室へ帰ることにしました。二人とも不安で何か言うと良くないことが起こってしまうような気がして、しばらく黙って工場のへい伝いに歩いていました。とうとうファラがガマンできなくなったようすで、リリに言いました。

「お父さんたちやお母さん、それにカミュランたち、だいじょうぶかなぁ・・・。きっと、だいじょうぶだよね。」

 リリは、下を向いてだまって歩いていました。不安な気持ちはますます増してきて、涙が出そうになりました。ファラが

「ねぇ、リリー。リリったら。」

なんどか呼ぶと、やっと顔をあげました。ちょっと涙ぐんでいます。そして、

「ファラ、どうしたら良いんだろう。」

と消え入りそうな声でいいました。

その時です。リリの足もとで、パシッと小さな音がしました。見ると、丸まった紙が落ちています。リリは思わず拾ってみました。そして『あれ?何だろう?』と思いながら、丸まった紙を開けてみました。紙には、小さな字で手紙らしきものが書いてありました。

「リリへ、この手紙は大人に絶対見せないで!!

 ハリーとぼくは、今、盗賊みたいな人たちに、つかまってる。工場で働いているおとなたちやゼクセル先生もいっしょだ。一階の食堂にみんな集められているんだ。盗賊たちは10人いる。さっき、教室を出る前にリリに話した大通りで見た怪しいやつらだ。どれもとっても恐い顔をしているように初めは見えたんだけど、よーく見ると、お頭と呼ばれている男以外は、みんなヒョロヒョロしていて意外と弱っちそうなんだ。リリも覚えていると思うけど、あの弱っちい紙芝居屋もいるよ。

 盗賊たちは、大人に、爆弾をたくさん作るように要求してきた。大人たちは、相手が意外と弱そうなので、スキを見て取り押さえようとしたんだ。9人まで取り押さえたんだけど、ヒゲをはやしたお頭が、とてもずる賢くて、僕たち子どもに大きな剣を突きつけ、作らないとひどい目にあわすぞと、おどして、結局大人たちをさからえなくしちゃったんだ。僕たちさえ、来なければ、取り押さえられたと思うので、僕はとってもくやしい。やっぱり、ゼクセル先生の言うように教室で待っていれば良かった。

 だから、大人たちは、仕方なく爆弾を作り始めたところだ。爆弾というのは、花火みたいなもので、違うところはきれいな光のかわりに、物をこなごなにしてしまうものらしい。工場の玄関がたいそうこわされてるのと、食堂のゆかに穴が空いているけど、どうやら、盗賊たちが工場をおそいに来た時に、持っていた爆弾で爆発させたって言ってたのを聞いたよ。僕たちが、学校で聞いた、すごい大きな音は、この爆弾の音だったんだ。 こんな物を盗賊たちは何に使うんだろう?考えると、とても恐い。

 どうにかして、盗賊から逃げることができないかと、ハリーと話していたんだけれど、食堂に空いた穴をのぞきこんで気づいたんだ。どうやら、食堂の下は下水道が通っているらしく、かすかに水の流れる音が聞こえる。この穴を大きくできればなぁ。ここから、出られそうなのに・・・。

 ただ、大問題があるんだ。どうやら、町の人たちの中に盗賊たちの手先がいるみたいなんだ。 さっき、盗賊のお頭が、窓越しに何人かと話していた。だから、大人たちに、この事を言うとバレちゃうことがあるので、伝えないで。」

 リリとファラは、読み終わって、顔を見合わせました。

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【 2008/05/11 22:36 】

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