紙芝居屋さん
 それから、しばらく三人は、いろんなお店や大道芸を次から次へとながめていましたが、やがて、ふと誰も集まっていないお店が、一番目立たないすみっこにあることに気づきました。誰もいないみたいです。

「何のお店だろう?」

とカミュランが言いました。お店の前には、たてが50センチ横1メートルくらいの木でできた四角いぶ厚い板が台の上に乗っていました。そして、そのぶ厚い板には、両開きの扉がついていました。
 ゴゴが、お店の奥に向かって

「おーい。おーい。」

と大きな声をかけました。すると、とつぜん、

「ひゃ〜。おっ、おっ、おっ、おやかた!かっ、かっ、かんべんしてくださひ。」

とつぜん20才くらいのやせた男が台の向こうから、飛び起きました。男は、今まで寝ていたらしく、寝ぼけているみたいです。そしてフラフラしながら続けて言いました。

「いっ、今から、始めるところです。その〜あの、準備でいそがしくて・・・・・・。ん?」

と、そこまで言いかけた時、やっと少し目が覚めたみたいで、リリたち三人の顔をまじまじと見て、

「ちくしょう。まったくビックリさせやがって。おやかたかと思っちゃったじゃないかよ。ただのこどもかー。」

と、男が言いました。それを聞いたカミュランが、ちょっとムッとしたようすで、

「こどもでも、お客さんには変わりないと思います。ここでは何を売っているのですか?」

と、少し大きな声でハッキリした口調で言いました。カミュランは、相手が誰であれ、自分の正しいと思ったことは、いつもハッキリと言います。そして、自分が間違っていると気づいた時も、キッパリとあやまることができます。そんな時、リリは、いつもヒヤヒヤしながらも『カミュランはリッパだなぁ。私もあんなふうに言えたらなぁ。』と思います。でも、今日みたいに見知らぬ大人が相手の時は、『相手が怒り出さないかなぁ。』とてもドキドキしてしまいました。
カミュランの強い口調に、男はちょっとビクッとすると、また急に態度を変えて、

「いらっしゃいませ。ここは、紙芝居屋でございます。あめを買ってくれたら大変オモシロい話しが聞けますよー。」

と、少し小さな声でおずおずと言いました。ゴゴは、

「紙芝居ってなあーに?」

と聞きました。

「紙芝居ですか。それは、さあー、これです。」

男は、急にはりきった声をだして、サッと板についている扉を両方に開きました。そこには、宝箱に金貨がたくさん入っている絵が描かれていました。そして

「宝はどこだよー。どこなんだよー。」

と、ちょっとへたな字で変わった題が書かれていました。リリは、『あまりオモシロそうじゃないなぁ。』と思いました。男は続けて言いました。

「さぁさ、このオモシロい紙芝居を見るには、アメを買ってね。今なら、たったの1銀貨。今なら、たったの1銀貨だよー。」

ゴゴは、ポケットに手を入れてサッと銀貨を出そうとしましたが、リリがその手をすぐに押さえました。そして、ひそひそ声で

「ゴゴ、ゴゴ、ダメだよ。高すぎるよ。第一、オモシロくなさそうだよ。」

と言いました。すると、カミュランが

「銀貨1枚だって!!これはビックリした。それだけあれば、リンゴあめに綿菓子やアイスクリームが買えて、その上、サーカスまで見られそうだなぁ。高すぎるからやめた。」

と言ってスタスタそこから離れて行こうとしました。そして、リリもあわてて、ついていこうとしました。
男は大変あわてたようすで言いました。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。5銅貨でどうだ。いや、3銅貨にするから。いやいや、1どうー」

男は言いかけましたが、カミュランは、振り向きもしないでスタスタ離れて行きます。リリもついて行こうとして、ふと気がつきました。ゴゴが、ついて来てません。

「ゴゴー、早くー。行くよー。」

リリはゴゴを呼びましたが、ゴゴはお店の前で、紙芝居を見入っています。そして、言いました。

「お姉ちゃん。僕は見ていくから。先にいってて。オモシロそうだもの。僕、ぜったいに見る。」

それを聞いた男は、

「さすが、坊ちゃん、お目が高い。」

と、言いました。カミュランは、ゴゴは一度言い出すと、なかなか言うことをきかないのを知ってましたので、

「しょうがないなぁ。じゃ僕らも見ていくかー。」

と言って、しぶしぶ、お店に戻って来ました。そのようすを見て男はニタニタしています。リリは小さな声で、カミュランに聞きました。

「だいじょうぶなの?」

カミュランも小さな声で

「だいじょうぶ。だいじょうぶだよ。まかせといて。」

と答えて、男に向かって言いました。

「さっき、1銅貨って言いましたよね。」

「え〜っと、そんなこと言いましたっけ?」

男はとぼけたようすで、言いました。

「言いましたよ。確かに。1銅貨だって」

と、カミュランが答えると、男は

「いいや、絶対に言っていませんよ。」

と言い、しばらく押し問答が続きました。リリはその間黙って聞きながら、キョロキョロまわりを見ていましたが、ふと何かに気づいたようすで口をはさみました。

「え〜と、この裏返しのカンバンに『アメは、たったの1銅貨だよー。』って書いてあるのだけど・・・」

 男は、『しまった』という表情を浮かべて、少しの間だまってしまいましたが、気を持ち直して言いました。

「オーッと、忘れてました。今日は、バザーの初日なので、特別値引きしてます。1銅貨、こんなにオモシロい紙芝居がたったの1銅貨ですよ。」

カミュランは、『やるー』といった顔でリリのほうを振り返り、

「1銅貨なら見てもいいよのね。」

と聞きました。リリがうんうんとうなづくと、

「では、アメを3本ください。」

と、男に言いました。
 3人がお金を払って、アメをもらうと

「宝はどこだよ。どこなんだよーの、はじまり、はじまりー。」

と、男は言って、サッと表紙をめくりました。そして、話し始めました。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

【 2008/05/03 23:31 】

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