バザーの日
 毎年、10月になると、ティンクル村では、バザーが開かれます。昔は、村で作った薬を細々と売っているだけでしたが、最近では、他の町からたくさんのお店がやってきて、とってもにぎやかです。
 このバザーには、めずらしいお店が、たくさんでるので、村の子供たちは、みんな楽しみにしていました。リリとゴゴもそうでした。

 その日の朝になると、リリとゴゴのお母さんは、わざと、おつかいを二人にたのみます。

「リリ、ゴゴ。お使いをたのまれてくれるかい?」

お母さんが聞くと、

「はーい!」

と、二人は声をそろえて、元気良くこたえました。そして、

「なにを買ってくるの?」

すぐにゴゴが聞きました。

「去年と同じもの?」

リリも続けて聞きます。お母さんは、

「おやまあ、ふだんは二人ともお使いと聞くとコソコソかくれていなくなるのに、今日はとってもお利口さんだね〜。」

と、とてもおかしそうに言いました。お父さんもニコニコしながら聞いています。

「それじゃ、チーズを一斤買ってきてもらおうかしら」

と、お母さんが言うと、二人は

「はーい」

と、また元気良く答えました。そして、チーズ代のお銀貨5枚をお母さんからもらいました。

 ゴゴはお金をもらうと、すぐに家を飛び出しそうになりました。でも、まだリリは、じっとしています。ゴゴが、

「おねーちゃん、はやくー。」

と、玄関のところで、けげんそうな顔つきでリリの方を見て、叫んでいます。お父さんは、リリのそのようすを見て

「そうそう、大事なものを忘れるところだった。やくそくしてたからね。」

と、言って、おこづかいに銀貨を1枚づつくれました。
 それから、二人は

「お父さんありがとう。では、行ってきまーす」

と、はりきって家を出ました。家を出ると、ゴゴは

「おねーちゃん、良く覚えてたねー。頭(あったま)いいー。」

と、たいそう感心したようすで、リリの方を見ました。そして、

「ぼく、おこづかいのこと、すっかり忘れてた。それに銀貨なんて初めてだよ。」

と、言いました。そして、ゴゴはもらった銀貨を大事そうに両方の手のひらに、はさんで歩いていました。リリは、

「落っことさないように、ポケットの奥のほうに入れとこうよ。」

と、ゴゴに言って、自分もスカートのポケットにしまい込みました。ゴゴは、

「そうする。その通りにする。やっぱり、おねーちゃん、頭いいねー。」

と、言ってズボンのポケットに押し込みました。

 二人が、村の大通りまで来ると、たいそう、にぎやかになっていました。大通りと言っても、いつもは、雑貨屋さんや魚屋さんなどの小さなお店が、ほんの数軒のきをつらねるだけですが、今日は出店がたくさん出ていて、全く違ってました。

 南でとれためずらしい果物や、北のほうのミルクで作ったお菓子を始めとする、珍しくておいそうな食べ物。色あざやかな服やアクセサリー。そして、大道芸。中でも、何も無いはずの帽子からボールやハトを出したり、トランプの数字を見ずに当てるマジックに、リリとゴゴちは、目を丸くして見入っていました。

「リリッ、リリ」

突然うしろから、声をかけられて、リリは、ちょっとびっくりしました。振り返ってみると、同じクラスのカミュランでした。

「いっしょにまわらないかい?」

カミュランが言いました。リリが答えるより先にゴゴは、

「いっしょにまわろうよ。ね、お姉ちゃん、いいでしょ。」

といいました。ゴゴがもっているパチンコは、実はカミュランが、作ってくれたものです。だから、ゴゴはカミュランが大好きでした。リリも本当は、声をかけられて、うれしかったのですが、

「いいよ」

とそっけなく言ってしまいました。

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【 2008/05/02 23:28 】

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紙芝居屋さん
 それから、しばらく三人は、いろんなお店や大道芸を次から次へとながめていましたが、やがて、ふと誰も集まっていないお店が、一番目立たないすみっこにあることに気づきました。誰もいないみたいです。

「何のお店だろう?」

とカミュランが言いました。お店の前には、たてが50センチ横1メートルくらいの木でできた四角いぶ厚い板が台の上に乗っていました。そして、そのぶ厚い板には、両開きの扉がついていました。
 ゴゴが、お店の奥に向かって

「おーい。おーい。」

と大きな声をかけました。すると、とつぜん、

「ひゃ〜。おっ、おっ、おっ、おやかた!かっ、かっ、かんべんしてくださひ。」

とつぜん20才くらいのやせた男が台の向こうから、飛び起きました。男は、今まで寝ていたらしく、寝ぼけているみたいです。そしてフラフラしながら続けて言いました。

「いっ、今から、始めるところです。その〜あの、準備でいそがしくて・・・・・・。ん?」

と、そこまで言いかけた時、やっと少し目が覚めたみたいで、リリたち三人の顔をまじまじと見て、

「ちくしょう。まったくビックリさせやがって。おやかたかと思っちゃったじゃないかよ。ただのこどもかー。」

と、男が言いました。それを聞いたカミュランが、ちょっとムッとしたようすで、

「こどもでも、お客さんには変わりないと思います。ここでは何を売っているのですか?」

と、少し大きな声でハッキリした口調で言いました。カミュランは、相手が誰であれ、自分の正しいと思ったことは、いつもハッキリと言います。そして、自分が間違っていると気づいた時も、キッパリとあやまることができます。そんな時、リリは、いつもヒヤヒヤしながらも『カミュランはリッパだなぁ。私もあんなふうに言えたらなぁ。』と思います。でも、今日みたいに見知らぬ大人が相手の時は、『相手が怒り出さないかなぁ。』とてもドキドキしてしまいました。
カミュランの強い口調に、男はちょっとビクッとすると、また急に態度を変えて、

「いらっしゃいませ。ここは、紙芝居屋でございます。あめを買ってくれたら大変オモシロい話しが聞けますよー。」

と、少し小さな声でおずおずと言いました。ゴゴは、

「紙芝居ってなあーに?」

と聞きました。

「紙芝居ですか。それは、さあー、これです。」

男は、急にはりきった声をだして、サッと板についている扉を両方に開きました。そこには、宝箱に金貨がたくさん入っている絵が描かれていました。そして

「宝はどこだよー。どこなんだよー。」

と、ちょっとへたな字で変わった題が書かれていました。リリは、『あまりオモシロそうじゃないなぁ。』と思いました。男は続けて言いました。

「さぁさ、このオモシロい紙芝居を見るには、アメを買ってね。今なら、たったの1銀貨。今なら、たったの1銀貨だよー。」

ゴゴは、ポケットに手を入れてサッと銀貨を出そうとしましたが、リリがその手をすぐに押さえました。そして、ひそひそ声で

「ゴゴ、ゴゴ、ダメだよ。高すぎるよ。第一、オモシロくなさそうだよ。」

と言いました。すると、カミュランが

「銀貨1枚だって!!これはビックリした。それだけあれば、リンゴあめに綿菓子やアイスクリームが買えて、その上、サーカスまで見られそうだなぁ。高すぎるからやめた。」

と言ってスタスタそこから離れて行こうとしました。そして、リリもあわてて、ついていこうとしました。
男は大変あわてたようすで言いました。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。5銅貨でどうだ。いや、3銅貨にするから。いやいや、1どうー」

男は言いかけましたが、カミュランは、振り向きもしないでスタスタ離れて行きます。リリもついて行こうとして、ふと気がつきました。ゴゴが、ついて来てません。

「ゴゴー、早くー。行くよー。」

リリはゴゴを呼びましたが、ゴゴはお店の前で、紙芝居を見入っています。そして、言いました。

「お姉ちゃん。僕は見ていくから。先にいってて。オモシロそうだもの。僕、ぜったいに見る。」

それを聞いた男は、

「さすが、坊ちゃん、お目が高い。」

と、言いました。カミュランは、ゴゴは一度言い出すと、なかなか言うことをきかないのを知ってましたので、

「しょうがないなぁ。じゃ僕らも見ていくかー。」

と言って、しぶしぶ、お店に戻って来ました。そのようすを見て男はニタニタしています。リリは小さな声で、カミュランに聞きました。

「だいじょうぶなの?」

カミュランも小さな声で

「だいじょうぶ。だいじょうぶだよ。まかせといて。」

と答えて、男に向かって言いました。

「さっき、1銅貨って言いましたよね。」

「え〜っと、そんなこと言いましたっけ?」

男はとぼけたようすで、言いました。

「言いましたよ。確かに。1銅貨だって」

と、カミュランが答えると、男は

「いいや、絶対に言っていませんよ。」

と言い、しばらく押し問答が続きました。リリはその間黙って聞きながら、キョロキョロまわりを見ていましたが、ふと何かに気づいたようすで口をはさみました。

「え〜と、この裏返しのカンバンに『アメは、たったの1銅貨だよー。』って書いてあるのだけど・・・」

 男は、『しまった』という表情を浮かべて、少しの間だまってしまいましたが、気を持ち直して言いました。

「オーッと、忘れてました。今日は、バザーの初日なので、特別値引きしてます。1銅貨、こんなにオモシロい紙芝居がたったの1銅貨ですよ。」

カミュランは、『やるー』といった顔でリリのほうを振り返り、

「1銅貨なら見てもいいよのね。」

と聞きました。リリがうんうんとうなづくと、

「では、アメを3本ください。」

と、男に言いました。
 3人がお金を払って、アメをもらうと

「宝はどこだよ。どこなんだよーの、はじまり、はじまりー。」

と、男は言って、サッと表紙をめくりました。そして、話し始めました。

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【 2008/05/03 23:31 】

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宝はどこだよ。どこなんだよー
 むかし、むかし、あるところに、小さな村がありました。村人たちはとても働き者で、毎日朝から晩まで小さな畑をたがやし、いそいそと働いていました。

 その村の一軒一軒の家には、神さまがいました。神さまは、家の横にある穴の中に住んでいて、その家族があぶなくなったり、こまったことが起こると、いつも助けてくれました。

 ある日のこと、1人の若者が、

「ああ、今日は働きたく無いなぁ〜。誰か、代わりに畑をたがやしてくれないかなぁ〜。」

と、ひとりごとを言いました。そして、その日は畑に行きませんでした。翌日、若者は、朝早く起きて言いました。

「昨日は、悪いことをしたなぁ〜。仕事をさぼってしまった。今日から心を入れ替えて、また、ちゃんと働こう。」

そして、畑のほうに歩いていきました。若者は畑につくと、とてもおどろきました。畑が、たがやされています。若者は、『誰かが、たがやしてくれたみたいだ。お礼を言わなくちゃ。』と思いました。

 それから、若者は村の一軒一軒を訪ねて歩きました。でもどの家の者に聞いても知らないという答えばかりでした。若者は大変不思議に思いました。
 その日の夜、若者はまた、

「ヤッパリ、明日も仕事したくないなぁ〜。誰か代わりに種をまいてくれないかなぁ〜。」

と、またひとりごとを言いました。翌朝、若者が畑に行ってみると、今度は種がまかれています。そして、また村中に聞いてまわりましたが、誰も知らないということでした。となりの畑をたがやしていた人もなにも見ていないようすでした。若者は何が何だかわけがわからなくなってしまいました。若者はさんざん悩んだあげく、『もしかしたら、願い事を言うと、夜のうちに誰かがやってくれているのかもしれない。みんなで僕をかついでいるに違いない。』と思いました。そうして若者は、少し大きな声で

「明日は畑に水をやらなきゃ。でも明日もやりたくないぞー。誰かやってくれないかなぁ〜。」

と言いました。

 その日の夜のことです。若者はコッソリ畑に行ってみました。しばらくすると、なにやら水をまく音がし始めました。若者がものかげから見てみると、そこには、水をまいている神さまがいました。

 若者はビックリして聞きました。

「どうして神さまがやってくれているのですか?」

神さまは

「頼まれれば、なんでもやるよ。さあ、水まきは終わったよ。次は何をやれば良いのかい?」

と、言いました。

 次の日、神さまが何でもやってくれるというウワサは、またたく間に村中に広がりました。
最初は、こわごわ頼んでいましたが、神さまたちは何でもやってくれるので、村人たちは、そのうち誰も働かなくなってしまいました。

 ある日のこと、

「金貨100枚、持ってきてくれ。」

と、村で一番欲張りな男が言いました。
神さまは、その男の家のとなりにある穴にもぐって行きました。そして、次の日、金貨を100枚、持って戻って来ました。
次の日から村中たいへんな騒ぎになりました。

「私は真珠の首飾りが欲しいわ。」

だの

「ダイヤモンドをちりばめた服が欲しい。」

だの村人たちは次から次へと新しいお願いを神さまたちにします。神さまたちは大忙しで自分たちの穴にもぐっては、新しい物を持ってきました。

 実は、神さまたちの上には、さらにエライ神さまがいました。そんなようすをみていたエライ神さまは、たいそう怒ってしまいました。そして、

「なんて、だらしない村人たちだ。自分たちで働こうとしないばかりか、宝物まで欲しがるとは!!」

と言って、村人たちから宝物を取り上げると、神さまたちの穴にもフタをしてしまいました。村人たちは、やっと自分たちの間違いに気づきましたが、エライ神さまは許してくれませんでした。

 それから、その村人がどんなにお願いしても、神さまたちが助けてくれることはありませんでした。神さまたちはフタをされたまま、穴の中で宝物を抱いて、ひっそりと暮らしています。今でもどこかにこの村はあるということです。

オシマイ

 男が話し終わると、ゴゴは、

「わー、おもしろかったー。」

と言って、パチパチパチパチと元気良く手をたたきました。リリとカミュランも意外と話しがおもしろかったのでパチパチと手をたたきました。

「一軒一軒、神さまがいるなんて、僕たちの村にちょっと似ているね。でも、神さまの出入りする穴なんて聞いたことが無いし、穴をふさいでいるフタも見たことが無いので、ヤッパリ僕らの村とは、違うみたいだ。それに皆、働き者だし・・・。でも、そんな穴があったら、すぐにでも探検するのになぁ。」

と、カミュランは言いました。ゴゴも

「探検してみたい。してみたーい!!」

と言って、ピョンピョンはねました。でもリリだけは、うかない顔をしてました。そして、昔のことを思い出していました。
『そう言えば、小さい頃に、隣のおじいさんのうちで、穴に落ちたことがあるわ。普通のおうちには、あんな穴なんか無いのに、どうしてあのおじいさんのおうちには、穴があいてたんだろう?それに・・・、あの時、おじいさんは、とってもこわい顔をしていた・・・・・・。そもそも、あのおじいさんは、誰だったんだろう。片目で眼帯をしていた。その目でにらまれて、とっても恐かったなぁ。お父さんもお母さんもよく知らないみたいだった。たしか、リリが赤ちゃんの頃に、どこからかやって来て、この村に住み着いたって言ってたっけ・・・。』

 リリが、もの思いにふけっていると、紙芝居屋の男は、ふーッと一息ついて、3人に言いました。

「でも、意外とこの村のことかも知れませんよ。昔ばなしには、本当のことが混じっていることがよくあるんですよ。それに、あっしは、聞いたことがあります。村から村へ、神さまの穴をさがしている年とった男がいるってことを。その年寄りは片目で、何年か前、この近辺の町でみかけたって話しですよ。」

それを聞いたリリは、ガーンと衝撃をうけました。そして、『隣のおじいさんだ!!』と思いました。
カミュランは、

「そんなことがあるもんか。この村の人たちは、みんな働き者だぞ。第一、神さまの穴なんて無いし。でも、お話しはおもしろかったよ。ありがとう。」

と言いました。そしてカミュランが

「さあ、みんな、そろそろ行こうか。」

と言ったので、リリとゴゴもさよならを言って紙芝居屋さんをあとにしました。

 カミュランは、紙芝居を見たあとすぐに、用事があるからと言って、二人と別れました。リリとゴゴも、夕方になってきたので、おつかいのチーズを買って、家に帰りました。
 

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【 2008/05/05 22:27 】

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大きな音
 その日の朝は、少し雪がちらついてました。リリとゴゴの村ティンクルに冬がやってきたのです。いつものようにリリは学校に、お父さんとお母さんは工場へ行きました。
 リリが授業を受けている時でした。急に、ドカーンという大きな音がしました。どうやら、学校の隣にある薬を作る工場からのようです。クラスの生徒たちは、ガヤガヤと騒ぎ始めました。ゼクセル先生も少しあわてて、

「皆さん、少し自習をしていてください。先生がようすを見てきますから。先生が戻って来るまで教室を離れないように。年長の者は、下の子の面倒をよく見ておくようにお願いします。」

と言って教室を出ていきました。
 リリは、『工場の方から、おっきな音がしたなぁ。お父さんとお母さんたち、だいじょうぶかなぁ。』とちょっと心配になりました。そして、隣にいるカミュランに

「さっきの音、何だったのかな?だいじょうぶかなぁ?」

と聞きました。カミュランは、

「とりあえず、先生の言う通り待っていようよ。」

と言いました。リリが黙っていると、カミュランは、しばらく間をおいて

「そう言えば、今朝のことだけど、村の大通りを通ってきた時、あやしい人たちを見かけたんだ。」

と言いました。

「えっ、あやしい人たちって、どんなかんじだったの?何人くらい、いたの?」

と、リリは聞き返しました。カミュランは、

「10人くらいだったかなぁ。みんな目つきが鋭くて、コシに剣を刺していたよ。ボクがちらっとそっちの方を見ると、ギョロってにらまれたので、とてもこわかった。それと、一番えらそうにしている人は、長いヒゲをしていたよ。・・・そう言えば、一人だけ前に見たことある人もいたっけ。えーと、どこで見たのかなあ?・・・そうだ!!バザーの時だ。いっしょに見た紙芝居屋さんだ。それに、」

と少し興奮ぎみに言うのを打ち消すように、リリは言いました。

「へー、紙芝居をまたやりに来たのかなぁ・・・。それはそうと、先生ずいぶん遅くない?みんな、さわぎ始めているし。」

年長の子たちが、ようすを見に行ってみようと言い始めています。そして、一番年が上のハリーが言いました。

「クラスを代表して、今からようすを見に行ってくるから。」

それを聞いたカミュランは、急に立ち上がって、

「でもゼクセル先生は、待っていなさいと言いましたよ。言いつけを守った方が良いと思います。」

と言いました。ハリーは

「なんだこわいんだろ。良いよ、お子さまはお留守番してろよ。」

と少し薄笑いを浮かべながら言いました。カミュランは、少し顔を紅潮させて、言いました。

「こわくなんか無いよ。ただ、先生の指示を守るべきだと思っただけさ。なんだったら、ぼくが行ってもいいよ。」

リリは、『わー、カミュランがまた、上級生に反抗している。だいじょうぶかなぁ。』と思いました。そして、

「カミュラン、カミュランったら。やめた方が良いよ。」

とカミュランのそでを引っ張りながら、小声で言いました。でもカミュランは立ったまま、ハリーの方をジッーとにらみつけています。ハリーは、やれやれといったようすで、

「それじゃ、カミュランも、いっしょに来いよ。」

と言いました。カミュランは

「良いよ。いっしょに行くよ。」

と答えて、いっしょに教室を出て行きました。

 しばらくしてもカミュランたちは帰ってきませんでした。リリはだんだん心配になってきました。後ろの席のファラがリリに話しかけてきました。ファラはリリと同い年の女の子で、よくいっしょに遊んでいます。

「ねぇ、ねぇ、リリー。カミュランたち帰ってこないねー。どうしちゃったのかしら。」

クラスのみんなもザワザワ騒ぎ始めました。そして、とうとう、みんなで行ってみようということになりました。
 リリも、ファラといっしょにみんなについていきました。学校を出て、裏口の方から工場へ抜ける道をゾロゾロと歩いていきました。

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【 2008/05/06 21:16 】

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村に来た盗賊
 工場の門の前まで来ると、たくさん大人が、集まっていました。そして、なにやら大声で工場に向かって話していました。近づいてみると、それは村長さんと村の年寄りたちでした。リリはファラといっしょに、ゼクセル先生やカミュランたちを探しましたが、見つかりませんでした。

「人質を解放しなさい!」

村長さんの声が聞こえました。おじいさんやおばあさんたちは、まわりで、ザワザワ話しています。その中には、リリとゴゴの上の階に住んでいるおばあちゃんもいました。

「リリちゃーん!」

リリを見つけたおばあちゃんは大声で呼びました。リリはすぐに気づいて、おばあちゃんの方へ駆け寄りました。ファラもつられて、ついていきました。

「なにがあったの?」

リリが聞こえました。おばあちゃんは

「それが私たちにも、よくわからないんだよ。どうやら、盗賊たちが、やって来て、工場に立てこもっているらしんだよ・・・。ふー」

とため息をつきながら、答えました。リリは

「じゃあ、お父さんやお母さんたちは、盗賊たちに、つかまっているの?そうだ!!ゼクセル先生や友達のカミュランが先に来たんだけど、おばあちゃん、知らない?」

と聞きました。おばあちゃんは

「くわしい事はよくわからないんだけど、どうも工場で働いている大人たちは、みんな人質になっているみたいなんだよ。それから、子どもも少しいるって聞いているよ。普通は工場に、子どもはいないから、リリのお友だちかも知れないねー・・・。とにかく、ここは大人にまかせて家に帰りなさい。何も心配ないからね。お友だちも、そうしなさい。」

と言いました。リリはファラと顔を見合わせました。リリは

「でも・・・」

と言いかけましたが、

「とにかく、すぐに帰りなさい!!」

いつものやさしくてノンビリした口調とは打って変わったおばあちゃんのキビシイ口調に、リリは少しビクッとして小さな声で

「はい・・」

と答えました。周りにいた他の子たちも同じように、大人たちにさとされて、しぶしぶ帰ることになりした。

 リリとファラは取りあえず荷物を取りに教室へ帰ることにしました。二人とも不安で何か言うと良くないことが起こってしまうような気がして、しばらく黙って工場のへい伝いに歩いていました。とうとうファラがガマンできなくなったようすで、リリに言いました。

「お父さんたちやお母さん、それにカミュランたち、だいじょうぶかなぁ・・・。きっと、だいじょうぶだよね。」

 リリは、下を向いてだまって歩いていました。不安な気持ちはますます増してきて、涙が出そうになりました。ファラが

「ねぇ、リリー。リリったら。」

なんどか呼ぶと、やっと顔をあげました。ちょっと涙ぐんでいます。そして、

「ファラ、どうしたら良いんだろう。」

と消え入りそうな声でいいました。

その時です。リリの足もとで、パシッと小さな音がしました。見ると、丸まった紙が落ちています。リリは思わず拾ってみました。そして『あれ?何だろう?』と思いながら、丸まった紙を開けてみました。紙には、小さな字で手紙らしきものが書いてありました。

「リリへ、この手紙は大人に絶対見せないで!!

 ハリーとぼくは、今、盗賊みたいな人たちに、つかまってる。工場で働いているおとなたちやゼクセル先生もいっしょだ。一階の食堂にみんな集められているんだ。盗賊たちは10人いる。さっき、教室を出る前にリリに話した大通りで見た怪しいやつらだ。どれもとっても恐い顔をしているように初めは見えたんだけど、よーく見ると、お頭と呼ばれている男以外は、みんなヒョロヒョロしていて意外と弱っちそうなんだ。リリも覚えていると思うけど、あの弱っちい紙芝居屋もいるよ。

 盗賊たちは、大人に、爆弾をたくさん作るように要求してきた。大人たちは、相手が意外と弱そうなので、スキを見て取り押さえようとしたんだ。9人まで取り押さえたんだけど、ヒゲをはやしたお頭が、とてもずる賢くて、僕たち子どもに大きな剣を突きつけ、作らないとひどい目にあわすぞと、おどして、結局大人たちをさからえなくしちゃったんだ。僕たちさえ、来なければ、取り押さえられたと思うので、僕はとってもくやしい。やっぱり、ゼクセル先生の言うように教室で待っていれば良かった。

 だから、大人たちは、仕方なく爆弾を作り始めたところだ。爆弾というのは、花火みたいなもので、違うところはきれいな光のかわりに、物をこなごなにしてしまうものらしい。工場の玄関がたいそうこわされてるのと、食堂のゆかに穴が空いているけど、どうやら、盗賊たちが工場をおそいに来た時に、持っていた爆弾で爆発させたって言ってたのを聞いたよ。僕たちが、学校で聞いた、すごい大きな音は、この爆弾の音だったんだ。 こんな物を盗賊たちは何に使うんだろう?考えると、とても恐い。

 どうにかして、盗賊から逃げることができないかと、ハリーと話していたんだけれど、食堂に空いた穴をのぞきこんで気づいたんだ。どうやら、食堂の下は下水道が通っているらしく、かすかに水の流れる音が聞こえる。この穴を大きくできればなぁ。ここから、出られそうなのに・・・。

 ただ、大問題があるんだ。どうやら、町の人たちの中に盗賊たちの手先がいるみたいなんだ。 さっき、盗賊のお頭が、窓越しに何人かと話していた。だから、大人たちに、この事を言うとバレちゃうことがあるので、伝えないで。」

 リリとファラは、読み終わって、顔を見合わせました。

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【 2008/05/11 22:36 】

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